こもちゃんTV出演レポート『外科医から在宅医へ 医療と福祉をつなぐ挑戦』

こもちゃんTV出演レポート|入江院長が語った「外科医から在宅医へ」の軌跡と、医療・福祉をつなぐ挑戦

2026年4月10日、当院院長の入江真大が「こもちゃんTV」に出演しました。外科医から在宅医への転身、土屋グループとの運命的な出会い、食道瘻(PTEG)の制度課題など、約1時間にわたって語られた内容のダイジェストをお届けします。

外科医時代——「治す」医療の最前線から

入江院長は岡山大学医学部を卒業後、呼吸器外科医としてキャリアをスタートしました。中学生の頃、岡山大学で日本初の肺移植手術が行われたニュースに心を動かされ、肺の外科を志したといいます。大学院で博士号を取得し、日々日付が変わるまで手術と研究に打ち込む日々を過ごしていました。

しかし、3人のお子さんの誕生をきっかけに、働き方を見つめ直すことに。家族との時間を大切にしたいという想いから、大学病院を離れ、慢性期病棟での勤務へとシフトチェンジしました。


「支える」医療との出会い——慢性期病棟での経験

慢性期病棟では、重症の患者さんの褥瘡ケアや人工呼吸器管理、気管切開、胃瘻の造設など、在宅医療に直結する医療行為を数多く経験。この時期の経験が、のちの在宅医療への転身を支える土台になったと振り返ります。

また、国立療養所 長島愛生園(ハンセン病療養所)での勤務についても語られました。瀬戸内海の穏やかな環境の中で、「治す」だけではない医療のあり方を体感したことが、入江院長の医師としての視野を大きく広げたといいます。

自身の「家族との時間」を求めた決断が、在宅で家族を支える人々の見えない苦労に気づく原点となりました。


食道瘻(PTEG)と制度の壁——患者にとって最適な選択肢が選べない現実

番組で最も熱く語られたのが、食道瘻(PTEG:経皮経食道胃管挿入術)にまつわる制度的課題です。

入江院長が慢性期病棟でALSの患者さんを担当した際、胃瘻のトラブルをきっかけに食道瘻を提案し、手術は成功。食道瘻は胃瘻と比べてチューブが細く、傷も小さく、日帰りや外来での手術も検討できる低侵襲の方法です。

しかし、胃瘻は喀痰吸引等研修を修了した介護職が経管栄養の接続を行えるのに対し、食道瘻は制度上認められていないという矛盾があります。医療的アプローチはほぼ同じにもかかわらず、介護職が扱えないために、食道瘻を選んだ患者さんが退院できない、あるいは家族が24時間すべてのケアを負担しなければならないという事態が生じているのです。

入江院長はこの問題について、厚労省への働きかけや関連団体との連携を通じて、制度のアップデートに取り組んでいることを語りました。


運命的な出会い——保育園のデイキャンプから始まった連携

番組のハイライトの一つが、土屋グループ・高浜代表との出会いのエピソードです。

食道瘻の制度課題に一人で悩んでいた入江院長。厚労省に相談したところ「医師の意見だけでは制度は変わらない」と言われ、途方に暮れていた矢先のことでした。

お子さんの保育園の10周年デイキャンプで、たまたま声をかけた「新しく入ってきたお父さん」が、全国で重度訪問介護を展開する株式会社土屋の高浜敏之代表だったのです。在宅医療の課題を抱える外科医と、介護職の活躍推進を掲げる介護事業者——まさに求めていたパートナーとの出会いでした。

入江院長は番組の中で「息子が保育園の抽選に落ちたことが、すべての始まりだった」と笑顔で振り返っています。

さらに、喀痰吸引等研修の制度づくりに尽力された川口有美子氏が入江院長の中学校の先輩だったというご縁もつながり、制度改善に向けた活動の輪が広がっています。

出会いからわずか4ヶ月後にクリニック開設のオファーを受け、2025年10月にはれのくに在宅クリニック杜の街が開院。現在は1歳から100歳まで、幅広い年齢の患者さんの訪問診療を行っています。


在宅ケアの質を高める鍵は「介護職の活躍」にある

番組を通じて入江院長が繰り返し強調していたのは、「在宅医療の質を高める鍵は、介護職の活躍にある」ということです。

在宅療養の現場では、医師や専門職が患者さんのそばにいられる時間はごくわずか。最も長く患者さんに寄り添っているのは、ご家族とヘルパーさんです。家族だけにケアを任せ続ければ負担は限界に達してしまう——だからこそ介護職がもっと活躍できる仕組みが必要だという想いが、クリニック開設の原動力になったと語りました。

また、歯科医師や言語聴覚士との連携を通じて、口から食べるリハビリを進めた結果、胃瘻が不要になった患者さんの事例も紹介。医療と福祉、多職種が力を合わせることで、患者さんの生活の質が大きく向上する可能性を示しました。


NPO設立とこれからのビジョン

入江院長は現在、NPO法人の設立準備も進めています。テーマは「地域共生」——障害の有無や年齢に関係なく、誰もが暮らしやすい社会の実現です。

2026年6月28日には、杜の街グレース2階でマルシェ形式のキックオフイベントを予定しており、当事者団体や地域の家族会にも声をかけていく計画です。

番組の最後に入江院長は、日々の行動指針として次のように語りました。

「できるときに、チャンスを逃さずやると決断する。先延ばしにせず、その場でそのときにやる」

医療と福祉の垣根を越え、岡山から地域共生のエコシステムを創っていく——はれのくに在宅クリニック杜の街の挑戦は、まだ始まったばかりです。


監修:入江 真大(いりえ まさひろ)

はれのくに在宅クリニック杜の街 院長/一般社団法人土屋雉翔会 代表理事。岡山大学医学部卒業後、呼吸器外科医として肺移植などの高度外科医療に従事。慢性期病棟、長島愛生園での勤務を経て、在宅医療の道へ。2025年10月にはれのくに在宅クリニック杜の街を開院。外科的処置・経腸栄養管理・人工呼吸器管理など医療依存度の高い患者にも対応し、1歳から100歳まで幅広い年齢層の訪問診療を行っている。

はれのくに在宅クリニック杜の街では、訪問診療に関するご相談を受け付けています。

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