在宅医療の多職種連携とは?|医師・看護師・介護職の役割をわかりやすく解説
在宅医療では、ひとりの患者さんのもとに、医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師——さまざまな専門職が関わります。
ご家族からすると、「いろんな人が来てくれるのはありがたいけれど、誰に何を相談すればいいのかわからない」という戸惑いがあるかもしれません。
また、ケアマネジャーや訪問看護師の方からは「新しい在宅クリニックと連携するとき、どんな情報共有の進め方がいいのか確認しておきたい」という声もよく聞かれます。
この記事では、在宅医療における「多職種連携」の仕組みと、それぞれの専門職がどんな役割を担っているのかを、わかりやすく解説します。
在宅医療の「多職種連携」とは
なぜ在宅医療には多職種連携が必要なのか
病院では、医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなどが同じ建物の中で連携しています。ナースステーションで声をかければ情報が共有でき、カルテも一元管理されています。
一方、在宅医療では、それぞれの専門職が別の事業所から、別の時間帯に、同じ患者さんのご自宅を訪問するという形になります。同じ空間にいないからこそ、意識的な情報共有と役割分担が欠かせません。
たとえば、ヘルパーが「最近、食事の量が減っている」と気づいたとします。この情報が医師に伝われば、栄養状態の変化を早期に察知して対策を打てます。しかし、情報が共有されなければ、次の訪問診療まで見過ごされてしまうかもしれません。
多職種連携とは、こうした「気づきのリレー」を仕組みとして機能させることです。
病院との違い——「廊下でのすれ違い」がない現場
病院では、廊下ですれ違ったときに「あの患者さん、昨日ちょっと様子が変だったんですが」と一言交わすだけで情報が動くことがあります。在宅医療にはこの「偶然の接点」がありません。
だからこそ、連絡ノート、電話、ICTツール、定期的なカンファレンスといった「意図的な接点」が重要になります。これが多職種連携の土台です。
在宅医療を支える専門職と、それぞれの役割
在宅医療に関わる主な専門職と、その役割を整理します。
| 職種 | 主な役割 | 家族にとっての接点 |
|---|---|---|
| 訪問診療医 | 定期的な診察、診療計画の策定、薬の処方、急変時の判断と往診 | 月2回程度の定期訪問。病状全体の説明や今後の方針を相談できる |
| 訪問看護師 | バイタル測定、医療処置(点滴・褥瘡ケア等)、服薬管理、療養上の相談 | 週1〜数回の訪問。日常の体調変化をこまめに見てくれる存在 |
| ケアマネジャー | ケアプランの作成・調整、各サービスの手配、制度面の相談窓口 | 介護サービス全体の調整役。困ったらまず連絡する相手 |
| 薬剤師 | 訪問薬剤管理指導、服薬状況の確認、残薬整理、医師への処方提案 | 薬の飲み合わせや副作用の相談ができる |
| 訪問介護員 | 食事・入浴・排泄の介助、家事支援、生活上の見守り | 日常生活で最も多く接する専門職。些細な変化にも気づきやすい |
| リハビリ専門職 | 身体機能の維持・改善、嚥下訓練、福祉用具の選定・調整 | PT・OT・STが状態に応じて訪問 |
| MSW | 社会資源の紹介、制度利用の支援、退院調整、意思決定支援、多職種連携 | 入院中から在宅への移行を橋渡し。経済的な相談にも対応 |
訪問診療医(医師)
在宅医療チームの中で、医師は医学的な判断に責任を持つ立場です。定期的に患者さんのご自宅を訪問し、診察を行い、治療方針を決め、必要な薬を処方します。
ただし、医師が訪問するのは月2回程度。それ以外の日常を支えるのは、次に紹介する訪問看護師や介護職の方々です。医師の重要な役割のひとつは、チーム全体に「治療の方向性」を示し、各職種が迷わず動ける土台をつくることです。
訪問看護師
訪問看護師は、在宅医療において医療と生活の接点に立つ存在です。医師の指示に基づく医療処置(点滴、褥瘡ケア、カテーテル管理など)を行うと同時に、日々の体調変化を観察し、異変があれば医師に報告します。
週に1〜数回の頻度で訪問するため、医師よりも「日常の変化」に気づきやすいポジションにあります。ご家族にとっては、ちょっとした心配ごとを気軽に相談できる、もっとも身近な医療職と言えるでしょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、介護保険サービスの利用計画(ケアプラン)を作成し、各サービスの調整役を担います。
訪問診療、訪問看護、訪問介護、デイサービス、福祉用具——さまざまなサービスが組み合わされる中で、それぞれの頻度やタイミングを調整し、全体が無理なく回るように組み立てます。
困ったことがあったとき、「誰に相談すればいいかわからない」という場合は、まずケアマネジャーに連絡するのがひとつの目安です。適切な専門職につないでくれます。
薬剤師(訪問薬剤管理指導)
在宅療養中の患者さんは、複数の薬を服用しているケースが多く、飲み忘れや飲み合わせの問題が起きやすくなります。訪問薬剤管理指導では、薬剤師がご自宅を訪問し、服薬状況の確認や残薬の整理、副作用のチェックを行います。
「最近、この薬を飲むとお腹の調子が悪い」といった相談にも対応し、必要に応じて医師に処方の見直しを提案します。
訪問介護員(ホームヘルパー)
訪問介護員は、食事、入浴、排泄の介助や、掃除・洗濯・買い物といった生活援助を通じて、患者さんの日常生活を最も近くで支える存在です。
医療職ではありませんが、日々訪問する中で「食欲が落ちている」「表情がいつもと違う」「部屋が散らかってきた」といった変化に最初に気づくのは、ヘルパーであることが少なくありません。こうした気づきを他の職種に共有することが、多職種連携の出発点になります。
リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
在宅でのリハビリテーションは、「機能を回復させる」ことだけが目的ではありません。現在の身体機能を維持し、転倒を防ぎ、できるだけ自分でできることを続けられるように支援することが重要です。
理学療法士(PT)は歩行や体力の維持、作業療法士(OT)は日常動作の工夫、言語聴覚士(ST)は飲み込みやコミュニケーションの支援を担当します。患者さんの状態に応じて、必要な専門職が訪問します。
医療ソーシャルワーカー(MSW)
病院の医療ソーシャルワーカーは、主に入院中から退院後の生活への橋渡しを行う専門職です。「退院後にどんなサービスが使えるか」「医療費の負担を軽減する制度はないか」といった相談に対応し、ケアマネジャーや在宅クリニックとの連携を調整します。
一方で在宅医療における医療ソーシャルワーカーは、患者さんやご家族の相談窓口となり、安心して在宅療養を続けられるよう支援する役割です。新規患者の受け入れ調整、病院からの退院調整、ケアマネジャー・訪問看護・薬局・行政など多職種との連携を行います。また、介護保険や福祉制度、医療費助成などの社会資源を案内し、家族の介護負担や生活上の課題にも対応します。医師・看護師と連携しながら、患者さんの療養生活を支える調整役です。
多職種連携は、実際にどう動いているのか
「多職種連携」という言葉は知っていても、実際にどのような形で行われているのかイメージしにくいかもしれません。ここでは、連携の具体的な「動き方」をご紹介します。
サービス担当者会議とカンファレンス
在宅医療では、必要に応じてサービス担当者会議(担当者会議)やカンファレンスが開かれます。ケアマネジャーが招集し、医師、訪問看護師、ヘルパー、薬剤師、リハビリ職などが集まって、患者さんの状態や今後の方針を共有します。
必ずしも全員が同じ時間に集まれるわけではないため、書面やオンラインでの参加も増えています。大切なのは、「今、この患者さんにとって何が課題で、誰が何をするのか」をチーム全体で確認することです。
情報共有のしくみ——連絡ノート・ICT・電話
日常的な情報共有の方法は、チームや地域によってさまざまです。
もっとも古典的で確実な方法が、ご自宅に置く連絡ノートです。各職種が訪問するたびに、体温や血圧、食事量、気づいたことを書き込みます。次に訪問した別の職種がそれを読むことで、日をまたいだ情報共有が成立します。
近年はICTツールを活用し、スマートフォン上でリアルタイムに情報を共有するケースも増えています。写真の共有(褥瘡の状態など)ができる点が大きなメリットです。
もちろん、急ぎの報告は電話が基本です。「いつもと明らかに様子が違う」「転倒した」といった場合は、訪問看護師やクリニックに電話で一報を入れることが大切です。
急変時の連携フロー
在宅療養中に最も不安を感じるのが、「急に具合が悪くなったとき」ではないでしょうか。多職種連携が真価を発揮するのは、まさにこうした場面です。
一般的な急変時の流れとしては、まずご家族またはヘルパーが異変に気づき、訪問看護師または在宅クリニックに電話連絡。看護師が状況を聞き取り、医師に報告して判断を仰ぐ。必要に応じて医師が往診に向かう、という形です。
このとき重要なのは、「誰に、どの番号に、何を伝えるか」が事前に決まっていることです。多くの在宅医療チームでは、緊急連絡先や対応手順をあらかじめ書面で共有しています。
※ 急変時の具体的な連絡先や対応フローは、クリニックや訪問看護ステーションによって異なります。在宅医療を開始する際に、担当チームに確認しておきましょう。
「誰に相談すればいいの?」家族が知っておきたいこと
困ったときの相談先チャート
「こんなとき、誰に連絡すれば?」という場面を想定して、相談先の目安を整理しました。
| こんなとき | まず連絡する相手 |
|---|---|
| 急に熱が出た、意識がおかしい、転倒した | 在宅クリニック(緊急の連絡先)または訪問看護ステーション(状況により119番) |
| 薬の飲み方がわからない、副作用が気になる | 訪問薬剤師、または訪問看護師 |
| 介護サービスの変更・追加を相談したい | ケアマネジャー |
| 福祉用具を変えたい(ベッド、車いす等) | ケアマネジャー → 福祉用具専門相談員 |
| 食事の工夫、飲み込みが心配 | 訪問看護師、またはリハビリ専門職(ST) |
| 介護に疲れた、気持ちがつらい | ケアマネジャー、訪問看護師(どちらでも) |
| 医療費・制度のことがよくわからない | ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカーまたは市区町村の地域包括支援センター |
迷ったときは、「まずケアマネジャーに電話」が安心です。ケアマネジャーは各専門職とのつながりを持っているので、適切な相手につないでくれます。
※ 精神的につらい状態が長く続く場合は、ケアマネジャーや主治医に加えて、お住まいの地域包括支援センターや精神保健福祉センターにもご相談いただけます。ひとりで抱え込まず、周囲の力を頼ってください。
家族も「チームの一員」
多職種連携の話をすると、どうしても「専門職同士の連携」のように聞こえるかもしれません。でも実は、在宅医療のチームの中で最も大切なメンバーのひとりが、ご家族です。
毎日そばにいるご家族だからこそ気づく変化があります。「なんとなく元気がない」「食べ残しが増えた気がする」——そうした感覚的な気づきも、専門職にとっては貴重な情報です。
遠慮する必要はありません。気になることがあれば、訪問時に一言伝えてください。その一言が、チーム全体を動かす起点になります。
はれのくに在宅クリニックの多職種連携体制
はれのくに在宅クリニック 杜の街では、院長の入江真大医師を中心に、小児科、小児外科、耳鼻咽喉科の専門医を含む複数の医師と、看護師、医療ソーシャルワーカー、医療事務がチームを組み、幅広い疾患・年齢に対応できる体制を整えています。
訪問看護ステーションやケアマネジャーとの連携を大切にしており、定期的なカンファレンスや迅速な情報共有を通じて、患者さんの「いつもの状態」をチーム全体で把握することを心がけています。
急変時には24時間体制で対応。「夜中に連絡しても大丈夫だろうか」と迷われるご家族もいらっしゃいますが、迷ったときこそご連絡ください。早めの一報が、適切な対応につながります。
ケアマネジャー・訪問看護ステーションの皆様からのご相談もお待ちしています。新規の患者さんのご紹介、連携に関するお問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。
はれのくに在宅クリニック 杜の街
〒700-0907 岡山県岡山市北区下石井2-10-8 杜の街グレース 杜の街プラザ5F
TEL:086-236-7750(診療時間内)
お問い合わせフォーム:https://harenokuni-clinic.jp/contact/
監修:入江 真大(いりえ まさひろ)
はれのくに在宅クリニック杜の街 院長/一般社団法人土屋雉翔会 代表理事。岡山大学医学部卒業後、呼吸器外科医として高度外科医療に従事。慢性期病棟では胃瘻造設・気管切開・人工呼吸器管理を数多く経験し、食道瘻(PTEG)の手術実績も持つ。2025年10月にはれのくに在宅クリニック杜の街を開院。外科的処置・経腸栄養管理・人工呼吸器管理など医療依存度の高い患者にも対応し、1歳から100歳まで幅広い年齢層の訪問診療を行っている。食道瘻の制度改善に向けた多団体連携や、NPO法人設立を通じた地域共生社会の実現にも取り組んでいるドクター紹介はこちら
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