訪問診療の費用はいくら?医療保険の自己負担と月額の目安
ご家族に訪問診療をすすめられたとき、多くの方が最初に気にされるのが費用のことです。「毎月いくらかかるのか」「年金の範囲でおさまるのか」——金額の見通しが立たないまま話が進んでいくのは、不安なものだと思います。
この記事では、訪問診療にかかる費用のしくみを、負担割合ごとの月額の目安から順にご説明します。2026年8月に見直された高額療養費制度の内容にも触れながら、負担が一定額を超えない仕組みまで含めてまとめました。
1. 訪問診療の費用は月いくら?まずは目安から
医療保険1割負担の方が月2回の訪問診療を受ける場合、基本的な診療費の自己負担は約7,000円が目安です。
ただしこれは、検査や処置、在宅酸素療法などの管理料を含まない基本部分の目安です。実際の金額は、ご本人の状態や必要な医療処置によって変わります。
1割・2割・3割負担で見る月額の目安
訪問診療は公的医療保険が使えるサービスです。窓口でお支払いいただくのは、かかった医療費のうちご自身の負担割合にあたる分だけです。
| 負担割合 | 月2回訪問の目安(基本部分) |
|---|---|
| 1割負担 | 約7,000円 |
| 2割負担 | 約10,000〜14,000円 |
| 3割負担 | 約15,000〜21,000円 |
※ 上記は、当クリニックがこれまでご案内してきた、月2回訪問・検査や処置を含まない場合の目安です。実際の金額は診療内容によって変わります。
※ 在宅療養支援診療所で月2回の訪問診療を受けた場合を想定しており、検査・処置・薬剤費、在宅酸素療法などの管理料は含みません。
※ 診療報酬は2026年度に改定されています。実際の金額は必ず医療機関にご確認ください。
75歳以上の方の多くは1割負担です。一定以上の所得がある場合は2割、現役並みの所得がある場合は3割となります。ご自身の負担割合は、保険証や資格確認書に記載されています。
なぜ「1回いくら」ではなく「月いくら」で考えるのか
訪問診療の費用には、月ごとにまとめて計算される部分があります。そのため「1回来てもらうといくら」という考え方だと、実際の金額と合いません。
月単位で見ると、訪問回数が増えても費用がそのまま倍になるわけではないことがわかります。金額の見通しを立てるときは、月額で考えるのが実態に近くなります。
2. 費用の中身を3つに分けて考える
訪問診療の費用は、「月ごとの管理料」「訪問1回ごとの診療費」「その他の実費」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
(1)定期的に診てもらう費用(在宅時医学総合管理料)
在宅時医学総合管理料は、計画的・継続的に在宅で医学管理を行うことに対して、月1回まとめて計算される費用です。訪問診療の費用の中では、最も大きな部分を占めます。
この管理料には、療養計画の作成や、訪問看護・ケアマネジャーなど他の職種との連絡調整も含まれています。訪問した時間だけでなく、その方の在宅療養を月を通して支える体制への費用、とお考えいただくとイメージしやすいかもしれません。
(2)訪問1回ごとにかかる費用
医師が実際にご自宅へうかがった回数に応じてかかる費用です。在宅患者訪問診療料といいます。月2回訪問した場合は、2回分が計算されます。
このほか、実際に行った検査や処置、点滴などがあれば、その分が加わります。
(3)交通費など、その他の実費
医療機関によっては、訪問にかかる交通費を実費としてご負担いただく場合があります。保険の対象外となるため、金額や取り扱いは医療機関ごとに異なります。
また、診断書や意見書などの書類作成を依頼された場合も、別途費用がかかることがあります。契約前に確認しておくと安心です。
※ 交通費の有無・金額は医療機関によって異なります。ご検討中の医療機関に直接お尋ねください。
3. 訪問回数や住まいの形で金額は変わる
同じ訪問診療でも、月の訪問回数と、同じ建物に何人の患者さんがいるかによって金額が変わります。
月1回と月2回では何が違うのか
月ごとの管理料は、訪問が月1回の場合と月2回以上の場合とで区分が分かれています。月2回以上のほうが手厚い管理を行う前提のため、金額も高くなります。
では回数は少ないほうがよいのかというと、そう単純ではありません。訪問の頻度は、ご本人の状態や医療処置の必要性から決まるものです。費用だけを理由に減らすと、体調の変化に気づくのが遅れることもあります。頻度に迷われたときは、費用の話も含めて主治医にご相談ください。
一戸建てと集合住宅で単価が変わる仕組み
同じ建物の中で何人の患者さんを診ているか(単一建物診療患者数)によっても、金額の区分が変わります。
高齢者向け住宅などで同じ建物に複数の患者さんがいる場合、移動の負担が少なくなるため、お一人あたりの管理料は低く設定されています。一戸建てにお住まいで、その建物でお一人だけが訪問診療を受けている場合は、最も高い区分にあたります。
4. 負担が上がりすぎない仕組みがある
医療費の自己負担には、ひと月あたりの上限があります。上限を超えた分は、高額療養費として払い戻されます。
高額療養費制度で上限がかかる
高額療養費制度は、ひと月(1日から末日まで)に支払った医療費の自己負担が一定額を超えたとき、超えた分が公的医療保険から支給される仕組みです。上限額は年齢と所得によって決まります。
医療処置の多い方や、入院と在宅療養が同じ月に重なった方では、この制度が実際に効いてくる場面があります。「思ったより高くなりそう」と感じたときは、まずこの上限額を確認してみてください。
2026年8月から上限額が引き上げられました
高額療養費制度は2026年8月に見直され、ひと月あたりの自己負担限度額が引き上げられました。70歳未満の方の場合、主な所得区分の変更は次のとおりです。
| 所得区分(年収の目安) | 2026年7月まで | 2026年8月から | 年間の上限 |
|---|---|---|---|
| 約370万〜約770万円 | 80,100円+α | 85,800円+α | 530,000円 |
| 約370万円以下 | 57,600円 | 61,500円 | 530,000円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | 290,000円 |
※ これより所得が高い区分は別に定められています。
※「+α」は、医療費が一定額を超えた部分の1%が加算される計算を指します。
※「年間の上限」は今回の見直しで新しく設けられたものです。対象となる1年間は8月1日から翌年7月31日までです。ひと月の上限に届かない月が続く方でも、1年間の合計がこの額に達した場合、超えて支払った分は加入している保険者から払い戻されます(償還)。窓口でのお支払いがその場で止まる仕組みではありません。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
注目していただきたいのが、いちばん右の「年間の上限」です。これまでは、ひと月の上限に少し届かない状態が1年間続くと、支援の対象になりませんでした。今回この仕組みが加わったことで、長く療養が続く方の負担に歯止めがかかります。
また、直近12か月に3回以上上限に達した場合に4回目から負担が軽くなる「多数回該当」は、これまでの水準が維持されました。長期療養の方への配慮が明確に示された見直しといえます。
70歳以上の方には、外来の上限が別に設けられています
70歳以上の方には、外来にかかった分だけを見た上限(外来特例)が別に用意されています。訪問診療は入院ではない扱いのため、一般にこの外来の上限が適用されます。
| 所得区分 | 上限の種類 | 2026年7月まで | 2026年8月から |
|---|---|---|---|
| 一般 | 外来(個人ごと) | 18,000円 | 22,000円 |
| 一般 | 外来の年間上限 | 144,000円 | 216,000円 |
| 一般 | 世帯ごと | 57,600円 | 61,500円 |
| 住民税非課税 | 外来(個人ごと) | 8,000円 | 11,000円 |
| 住民税非課税 | 世帯ごと | 24,600円 | 25,700円 |
※ 住民税非課税の方の外来には、新たに年96,000円の年間上限が設けられました。毎月上限まで負担されている方の年間の負担額は、これまでと変わりません。
※ 住民税非課税のうち所得が一定以下の区分では、外来の上限は8,000円のまま据え置かれています。
※ 現役並みの所得がある方には外来特例の適用がありません。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
たとえば1割負担で訪問診療を受けている方の場合、月々の自己負担がこの上限に届かないことも多くあります。一方で、在宅酸素療法や経管栄養など医療的な管理が重なると、上限に達する月も出てきます。
限度額適用認定証を先に用意しておくと窓口が楽になる
高額療養費は、あとから申請して払い戻しを受けるのが原則です。ただし払い戻しには数か月かかるため、いったんは高い金額をお支払いいただくことになります。
これを避けるには、事前に「限度額適用認定証」を用意しておく方法があります。医療機関の窓口で提示することで、原則として窓口でのお支払いを自己負担限度額までに抑えられます。マイナ保険証をご利用の場合は、限度額情報の提供に同意することで、認定証の提示が不要になります。適用の開始時期や手続きの要否は、加入されている保険者や所得区分によって異なりますので、事前に保険者へご確認ください。
申請先は、後期高齢者医療制度の方は市区町村の担当窓口、国民健康保険の方も市区町村、お勤め先の健康保険であれば健康保険組合や協会けんぽです。退院前に手続きを済ませておくと、在宅療養の開始時にあわてずに済みます。
※ 2027年(令和9年)8月には所得区分がさらに細分化される予定です。時期が近づきましたら本記事も更新します。
5. 介護保険サービスと一緒に使うときは
訪問診療は医療保険、ヘルパーや福祉用具は介護保険です。財布が2つある、とイメージしていただくとわかりやすいと思います。
医療保険と介護保険、それぞれの受け持ち
在宅療養では、医療と介護の両方のサービスを組み合わせて使うのが一般的です。どちらの保険から支払われるかは、サービスの種類によって決まっています。
| サービス | 主な保険 |
|---|---|
| 訪問診療・往診 | 医療保険 |
| 訪問介護(ヘルパー) | 介護保険 |
| 福祉用具のレンタル・住宅改修 | 介護保険 |
| デイサービス・ショートステイ | 介護保険 |
介護保険には要介護度ごとに支給限度額があり、その範囲内でご利用いただいた分の自己負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかになります。訪問診療の費用は、この介護保険の限度額とは別枠で計算されます。
訪問看護はどちらになる?
訪問看護は、状態によって医療保険と介護保険のどちらから支払われるかが変わります。要介護認定を受けている方の訪問看護は、原則として介護保険の対象です。ただし、末期の悪性腫瘍や一定の難病など「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合や、急な状態の悪化により主治医から特別訪問看護指示書が交付された期間などは、医療保険の対象になります。
どちらの保険が適用されるかは、ご本人の状態と主治医の指示をもとに決まります。ご家族が自分で判断される必要はありません。ケアマネジャー、主治医、または訪問看護ステーションにご相談ください。
6. 費用で迷ったときの相談先
費用の相談は、医療機関に直接聞いていただいて構いません。遠慮される必要はありません。
退院を控えている段階であれば、まずは病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカー(MSW)が相談先になります。医療費の制度に詳しく、利用できる助成の案内も受けられます。
すでにケアマネジャーがついている場合は、介護保険側の費用とあわせて全体像を整理してもらえます。医療と介護を合わせて月々いくらになるのかは、ケアマネジャーに聞くのが近道です。
そして、訪問診療を依頼しようとしているクリニックに、直接お尋ねいただくこともできます。「毎月どのくらいになりますか」「交通費はかかりますか」といった質問は、どのクリニックでも日常的に受けているものです。契約前に聞いておくほうが、あとになって困りません。
7. 岡山市で訪問診療をお探しの方へ
はれのくに在宅クリニック杜の街は、岡山市北区で訪問診療を専門に行っているクリニックです。2025年10月に開院し、外科的処置や経腸栄養の管理、人工呼吸器の管理など、医療的な支えを多く必要とする方にも対応しています。
費用のこと、始めるまでの流れのこと、ご家族の負担のこと。どんな段階のご相談でも構いませんので、気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
Q. 訪問診療を受けると、介護保険の限度額を使ってしまいますか?
A. 使いません。訪問診療は医療保険から支払われるため、介護保険の支給限度額とは別枠で計算されます。ヘルパーや福祉用具の利用が減ってしまう心配はありません。
Q. 交通費は必ずかかりますか?
A. 医療機関によって異なります。交通費は保険の対象外となるため、実費としてご負担いただく場合と、いただかない場合があります。金額もあわせて、契約前にご確認ください。
Q. 月の途中で入院した場合、費用はどうなりますか?
A. 入院期間や退院日、その月に行った訪問診療の内容によって、在宅時医学総合管理料などの取り扱いや金額は変わります。また、入院分と在宅分の医療費を高額療養費でどのように計算するかは、年齢、加入されている医療保険、世帯の状況などによって異なります。入院が決まった場合は、医療機関または加入されている保険者にご確認ください。
Q. 限度額適用認定証は、いつまでに用意すればよいですか?
A. 適用の開始時期や手続きの要否は、加入されている保険者や所得区分によって異なります。退院前に保険者へ確認して手続きを済ませておくと、在宅療養が始まってからあわてずに済みます。マイナ保険証をご利用の場合は、限度額情報の提供に同意する方法もあります。
8. まとめ
訪問診療の費用は、1割負担の方で月2回訪問の場合、基本部分で約7,000円が目安です。費用は「月ごとの管理料」「訪問1回ごとの診療費」「その他の実費」の3つで構成されています。
負担が高くなりすぎないよう、高額療養費制度による月ごとの上限も設けられています。2026年8月から上限額は引き上げられましたが、長く療養が続く方への配慮も同時に用意されました。
金額の見通しが立つと、在宅療養そのものを落ち着いて考えられるようになります。わからないことは、遠慮なく周りの専門職に聞いてみてください。一つずつ確認していけば大丈夫です。
はれのくに在宅クリニック杜の街では、訪問診療に関するご相談を受け付けています。
ご相談・お問い合わせはこちら出典
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
- 厚生労働省「高額療養費制度に関する参考資料」https://www.mhlw.go.jp/content/001729632.pdf
- 厚生労働省「診療報酬点数表」(令和8年度改定)
- 厚生労働省「在宅医療の推進について」
- 厚生労働省「訪問看護」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000661085.pdf
- e-Gov法令検索「介護保険法」(平成九年法律第百二十三号)https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
※ 本記事の内容は2026年8月現在の制度に基づいています。
