採用コラム
在宅医療の医師の働き方とは?病院勤務医との違い・日々の診療・キャリアの考え方
「当直明けの疲労が、以前より抜けなくなってきた」「家族との時間がほとんど取れない」——病院勤務を続けるなかで、在宅医療という働き方が気になり始めた先生へ。この記事では、訪問診療医の仕事内容と1週間の流れ、オンコールの実際、給与・休日・キャリアの考え方までを、病院勤務医との「構造の違い」を軸に解説します。条件面の比較だけでは見えてこない、在宅医療という選択肢の実像をお伝えできれば幸いです。
「このまま当直を続けられるのか」——病院勤務医が在宅医療を調べ始める理由
在宅医療への転身を考え始めるきっかけは、多くの場合「体力の限界」そのものではなく、「今の働き方の構造をあと20年以上続けられるのか」という疑問です。
キャリアの中盤で訪れる働き方の転機と、職場では相談しにくいキャリアの選択
2024年4月から、医師にも時間外・休日労働の上限規制(原則年960時間、月100時間未満)が適用されました。しかし厚生労働省「令和4年 医師の勤務実態調査」(2022年)では、病院常勤勤務医の21.2%が年960時間を超える時間外・休日労働に相当する働き方をしていたと報告されています。制度は動き始めましたが、当直・オンコール・カンファレンス・書類業務が積み重なる日常の構造は、一朝一夕には変わりません。
30代以降は、体力の変化と家庭での役割の重さが同時にやってくる時期です。「このままの働き方を60歳まで続けられるだろうか」という問いは、決して弱音ではありません。医師としてのキャリアを長く健全に続けるための、現実的な問いです。一方で、院内では転職の話題を出しにくく、誰にも相談できないまま一人で情報収集を始める先生が少なくありません。
求人票の条件だけでは「実際の働き方」がわからない
在宅医療の求人票には「年俸」「年間休日」「オンコールあり」といった条件は書かれています。しかし、1日の診療がどう流れるのか、オンコールで実際にどれくらい呼ばれるのか、どんな患者さんを診るのか——働き方の「中身」までは読み取れません。転職サイトを眺めても条件の羅列ばかりで、かえって判断がつかなくなった経験はないでしょうか。この記事では、その「中身」から先に整理していきます。
在宅医療の医師の仕事内容——外来・病棟勤務と何が違うのか
在宅医療の医師の仕事は「予定された訪問診療」が中心です。不特定多数を待ち受ける外来とは異なり、担当患者さんを計画的・継続的に診ていく構造を持っています。
訪問診療の1週間——計画的な診療スケジュールという構造
訪問診療は、月2回程度の定期訪問を基本として、あらかじめ組まれたスケジュールに沿って患者さんのご自宅を訪問します。1日の訪問件数はクリニックの体制や地域特性によりますが、午前・午後のルートが計画的に組まれ、移動時間も含めて1日の流れを見通せるのが特徴です。
外来の「今日は何人来るかわからない」、病棟の「いつ急変で呼ばれるかわからない」という不確実性と比べると、時間の設計がしやすい働き方だといえます。もちろん臨時往診への対応はありますが、それは「顔と経過を知っている担当患者さん」への対応であり、初対面の救急対応とは負荷の質が異なります。
診る患者層——軽症高齢者だけではない、医療依存度の高い在宅患者
「在宅医療=状態の安定した高齢者の定期診察」というイメージは、実態の一部でしかありません。近年は、人工呼吸器や気管切開の管理、胃瘻・経腸栄養、がん終末期の緩和ケア、褥瘡管理など、医療依存度の高い患者さんが病院から在宅へ移行するケースが増えています。医療的ケアを必要とするお子さんを診る在宅クリニックもあります。
つまり、病院で培った外科・内科の専門性は、在宅医療で「使わなくなる」のではありません。病院の外で「使い方が変わる」のです。処置の技術、全身管理の経験、急変対応の判断力——これらはむしろ、設備の限られた在宅の現場でこそ価値を発揮します。
多職種チームの中での医師の役割——「ひとりで抱えない」診療体制
在宅医療では、訪問看護師・ケアマネジャー・薬剤師・リハビリ職・歯科医師・介護職など、多職種と日常的に情報を共有しながら診療を進めます。医師は診察所見だけでなく、各職種が捉えた日々の変化や生活状況、本人・家族の希望を踏まえ、医学的な評価と治療方針を組み立てます。
多職種で支える在宅医療——限られた環境で患者さんの生活全体を診る
一方、在宅医療では、病院のように検査や医療資源が整っているとは限りません。限られた情報から状態を判断し、内科・外科・緩和ケア・認知症・小児など幅広い課題に対応する力が求められます。また、患者さん本人と家族の意向が一致しない場合や、医学的に望ましい治療が生活環境や介護力の面から実行困難な場合もあります。看取りや急変に継続して関わることには、責任の重さや心理的な負担も伴います。
だからこそ、一人の医師だけで完結させるのではなく、それぞれの専門性を持ち寄り、患者さんにとって現実的で納得できる方針をチームで考えることが重要です。「楽になる」ための役割分担ではなく、一人では捉えきれない患者さんの全体像に、多職種で向き合う働き方だといえます。
オンコール・当直の実際——負荷の「量」ではなく「構造」が違う
病院の当直と在宅医療のオンコールは、回数だけを並べて比較できません。拘束のされ方、連絡の入り方、対応の完結のしかた——負荷の構造そのものが異なるためです。
病院の当直と在宅のオンコールは何が違うのか
病院の当直は、院内に身体を拘束され、初対面の救急患者を含む不特定多数への即時対応が求められます。一方、在宅医療のオンコールは自宅待機が基本で、連絡の多くは担当患者さんのご本人・ご家族・訪問看護師からの電話相談です。当院では主に看護師がファーストコールに対応しています。
状態も経過も背景も把握している患者さんからの連絡ですから、電話での指示や翌日の訪問調整で対応できるケースも多く、深夜の緊急往診が毎晩続くわけではありません。ただし、看取り期の患者さんを多く担当している時期は夜間対応が増えるなど、波があることも事実です。この「波」を平準化できるかどうかは、次に述べる体制設計にかかっています。
オンコール負担はクリニックの体制設計で大きく変わる
オンコールの負担は、医師個人の頑張りではなく、クリニックの体制設計に大きく左右されます。具体的な確認ポイントは3つあります。第一に、医師が複数名いて当番を分担できる体制か。第二に、夜間・休日のファーストコールを看護師が受ける仕組みがあるか。第三に、日中の診療で夜間の変化を予測し、先回りの指示(頓用薬の準備や家族への説明)を出せているか。
転職を検討する際は、「オンコールは月何回ですか」だけで終わらせず、「夜間の連絡はまずどこに入りますか」「実際に出動する頻度はどのくらいですか」まで確認することをおすすめします。この質問への答えの具体性が、そのクリニックの体制成熟度を映し出します。
給与・休日・キャリア——転職前に整理しておきたい3つの判断材料
在宅医療は、収入水準を保ちながら「時間の主導権」を取り戻しやすい領域です。ポイントは「楽になる」ことではなく、働き方の構造が変わることにあります。
在宅医の年収水準と病院勤務医との比較【2026年現在】
在宅医療分野は医師の需要が高く、医師転職市場では病院勤務医と同水準か、それ以上の条件が提示される求人も多く見られます。特徴的なのは、当直手当や時間外手当に依存した収入構成ではなく、基本年俸として提示されるケースが中心である点です。病院勤務では「当直を減らせば収入が下がる」というジレンマがありますが、在宅医療ではこの構造から離れやすくなります。なお、具体的な水準は地域・法人・役職によって幅があるため、個別の求人条件でご確認ください。
年間休日と家庭との両立——「時間の主導権」という視点
定期訪問は平日の日中に計画されるため、週末の予定が立てやすく、学校行事や家族との時間を確保しやすい働き方です。ここで大切なのは、休日の「日数」だけでなく「予定どおり休める確率」だと私たちは考えています。呼ばれるかどうかわからない待機が続く休日と、当番日が明確に決まっているオンコール制の休日では、同じ日数でも生活の質は大きく変わります。
「在宅医はキャリアダウン」は本当か——専門性が組み替わる領域
「在宅医は第一線を退いた医師の仕事」という見方は、すでに実態と合わなくなっています。在宅医療の現場で求められるのは、限られた検査・設備のなかで診断と方針決定を行う総合診療能力、終末期の意思決定支援、ご家族へのケア、多職種チームのマネジメント——病院とは別の、高度なスキルセットです。
緩和医療専門医などの認定資格や、学会・研究会活動を通じて専門性を深めていく医師も増えています。在宅医療への転身は「専門性を手放すこと」ではなく、これまでの専門性を土台にした「専門性のシフトチェンジ」と捉えるほうが、実態に近いといえるでしょう。
開業でも大病院でもない「第三の選択肢」——組織で取り組む在宅医療
在宅医療への転身は「開業」だけではありません。組織に所属する勤務医のまま、在宅医療に取り組む道があります。
勤務医のまま在宅医療に挑戦できる働き方
在宅クリニックの常勤医・非常勤医として働けば、開業資金や経営リスクを負わずに在宅医療のキャリアを始められます。経営・採用・労務は運営法人が担い、医師は診療に集中できる。「病院を出る=独立」ではない選択肢が広がっていることは、意外に知られていません。
また、いきなり常勤で飛び込む必要もありません。非常勤として週1日から在宅医療に触れ、自分に合う働き方かどうかを確かめてから常勤に移る、という段階的な方法も現実的です。
立ち上げ期のクリニックだから得られる経験——診療×体制づくり
開院から間もないクリニックでは、診療体制やオンコールの仕組み、多職種連携のルールづくりに、医師自身が関わることもできます。完成した組織に入るのとは違い、「診療」と「体制づくり」の両方を経験できる時期は限られています。将来的にマネジメントや開業を視野に入れている医師にとって、立ち上げ期のクリニックでの経験は、他では得がたいキャリア資産になります。
岡山で在宅医療に携わるという選択——はれのくに在宅クリニック杜の街の場合
はれのくに在宅クリニック杜の街(岡山市北区)は、2025年10月に開院したばかりの訪問診療専門クリニックです。体制づくりの真っただ中にある今、診療を共に支えてくださる医師を募集しています。
当院の診療体制と募集条件
当院は外来を行わない訪問診療専門のクリニックとして、外科的処置、胃瘻・PTEG(経皮経食道胃管)を含む経腸栄養管理、気管切開・人工呼吸器管理など、医療依存度の高い患者さんの在宅医療に対応しています。対象は0歳から100歳以上まで。岡山市中心部の杜の街グレースを拠点に、周辺地域へ訪問しています。
院長の入江真大は呼吸器外科の出身で、日本PTEG研究会幹事・PTEG取り扱い認定医。肺移植などの高度外科医療から在宅医療へ転身したキャリアの持ち主です。「外科医のスキルは在宅でこそ活きる」——その実感を、同じ道を考える先生と共有したいと考えています。
募集条件(2026年7月現在)は次のとおりです。
| 常勤管理医師 | 年俸1,600万円〜(経験により優遇・応相談) |
|---|---|
| 非常勤医師 | 時給10,000円〜 |
| 休日 | 年間休日125日 |
| 待遇 | 昇給・賞与あり |
見学・カジュアル面談のご案内
「まずは話だけ聞いてみたい」「在宅医療の現場を見てみたい」——そんな段階のご連絡も歓迎しています。転職の意思が固まっていなくても構いません。院長との面談で、働き方やキャリアについて率直にお話しできればと思います。
医師の募集要項の詳細は医師採用ページをご覧ください。院長のキャリアについては、公式サイトのコラム「開業志向ゼロの外科医が『組織で挑む』在宅医療を選んだ理由とは?」でも詳しくお読みいただけます。診療内容や在籍する医師についてはドクター紹介ページもあわせてご覧ください。
出典・注記
※厚生労働省「医師の働き方改革」制度資料(2024年4月施行の時間外・休日労働上限規制:原則年960時間/月100時間未満)
※厚生労働省「令和4年 医師の勤務実態調査」(病院常勤勤務医のうち時間外・休日労働が年960時間超相当:21.2%)
※年収・休日・オンコール等に関する記述は在宅医療分野の一般的な傾向であり、実際の条件は地域・法人・役職によって異なります。当院の募集条件は2026年7月現在のものです。
はれのくに在宅クリニック 杜の街
〒700-0907 岡山県岡山市北区下石井2-10-8 杜の街グレース 杜の街プラザ5F
TEL:086-236-7750(診療時間内)
採用に関するお問い合わせ:https://recruit.harenokuni-clinic.jp/contact/
監修:入江 真大(いりえ まさひろ)
はれのくに在宅クリニック杜の街 院長/一般社団法人土屋雉翔会 代表理事。岡山大学医学部卒業後、呼吸器外科医として高度外科医療に従事。慢性期病棟では胃瘻造設・気管切開・人工呼吸器管理を数多く経験し、食道瘻(PTEG)の手術実績も持つ。2025年10月にはれのくに在宅クリニック杜の街を開院。外科的処置・経腸栄養管理・人工呼吸器管理など医療依存度の高い患者にも対応し、1歳から100歳まで幅広い年齢層の訪問診療を行っている。食道瘻の制度改善に向けた多団体連携や、NPO法人設立を通じた地域共生社会の実現にも取り組んでいるドクター紹介はこちら
はれのくに在宅クリニック杜の街では、訪問診療を共に支えてくださる医師を募集しています。「まずは話を聞いてみたい」という段階のご連絡も歓迎です。
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