訪問診療と往診の違いとは?定期的な医療とその都度の医療
「往診してもらえますか」——病院やケアマネジャーとの相談の場で、こう聞かれて戸惑ったことはないでしょうか。訪問診療と往診。どちらも医師が自宅へ来てくれることに変わりはないのですが、制度の上では別のものとして扱われています。
この記事では、2つの違いを整理したうえで、実際にはどう使い分けられているのかをご説明します。あわせて、多くのご家族が最も気にされる「夜中に具合が悪くなったとき、本当に来てもらえるのか」という点についても触れます。
1. いちばん大きな違いは「計画的かどうか」
訪問診療はあらかじめ決めた計画にそって定期的に行うもの、往診は必要になったときにその都度お願いするものです。
訪問診療では、「毎月第2・第4火曜日の午後」というように、訪問の日程を前もって決めます。医師は診療計画を立て、その計画にそって継続的に体調を診ていきます。
往診は、こうした計画とは関係なく、患者さんやご家族から求めがあったときに医師が出向くものです。発熱した、痛みが強くなった、といった場面が該当します。
この「計画的かどうか」が、費用のしくみにも、依頼の仕方にも影響してきます。
2. 訪問診療とは?定期的に自宅へ通う医療
通院が難しくなった方に対して、医師が計画的にご自宅へうかがい、継続して体調を診ていく医療です。
どのくらいの頻度で来てもらえるのか
訪問の頻度は、ご本人の病状や必要な医療・ケアの内容をふまえて医師が判断し、診療計画に定めます。月1回から2回とすることが多く、医療的な処置が必要な方や体調の変化が大きい方では、月2回以上になることもあります。
頻度は主治医が状態を見て判断しますが、ご家族の希望を伝えることもできます。「最近食事の量が減っていて心配」といった気づきは、頻度を考えるうえで貴重な情報です。遠慮なくお伝えください。
どんな方が対象になるのか
訪問診療の対象は、通院が困難な方です。距離が遠いという理由だけではなく、病状、身体の状態、認知機能、ご家族の付き添いが難しいことなどを総合的に見て判断されます。
「歩けないほどではないけれど、外来で長時間待つのがつらい」という状態でも対象になることがあります。判断に迷われる場合は、一度相談してみるのがよいと思います。
※ 訪問診療を始めるにあたっては、ご本人の意思を尊重し、ご本人やご家族に診療の内容・連絡体制・費用をご説明したうえで進めます。ご本人の意思を確認することが難しい場合は、ご家族や関わる専門職と相談しながら、ご本人の意向を大切にして方針を決めていきます。
3. 往診とは?必要になったときに来てもらう医療
急な体調の変化があったときに、患者さんやご家族の求めに応じて医師がうかがうのが往診です。
どんなときに呼ぶものなのか
熱が出た、痛みが強くなった、食事や水分がとれなくなった、いつもと様子が違う。こうした場面が往診を依頼するタイミングです。
迷われることも多いと思います。訪問診療を受けている方であれば、まずは訪問看護ステーションやクリニックに電話で相談し、往診が必要かどうかを一緒に判断してもらう流れが一般的です。呼ぶかどうかをご家族だけで決める必要はありません。
呼べば必ず来てもらえるのか
往診に対応するかどうか、また対応できる時間帯は、医療機関によって異なります。日中のみ対応するところもあれば、夜間や休日も体制を整えているところもあります。
また、往診は医師が自宅へ向かう医療であるため、心肺停止や大量出血など、一刻を争う状況には向きません。そうした場合は迷わず119番通報をしてください。救急車を呼ぶべきか判断に迷うときは、岡山県では「岡山県救急安心センター」に相談できます(♯7119 または 086-222-7119、全日24時間)。全国版救急受診アプリ「Q助」も判断の目安として利用できます。ただし♯7119は全国一律の仕組みではなく、実施していない地域もあります。あわせて、訪問診療の開始時に、急変時の連絡先と判断の目安を確認しておいてください。
4. 表で見る、4つの違い
依頼のきっかけ、日程の決め方、費用のかかり方、保険上の扱い。この4点で整理すると違いがはっきりします。
| 訪問診療 | 往診 | |
|---|---|---|
| 依頼のきっかけ | 通院が難しくなったとき | 急な体調の変化 |
| 日程 | あらかじめ決めておく | その都度 |
| 費用 | 月ごとの管理料+訪問回数分 | 往診1回ごと |
| 夜間・休日 | 原則として日中 | 時間帯により加算あり |
費用の面では、訪問診療には月ごとにまとめて計算される管理料があるのに対し、往診は来てもらった回数ごとの計算になります。夜間や休日、深夜の往診では、時間帯に応じた加算がつきます。
※ 上の表は費用のかかり方の違いを大まかに整理したものです。実際にどの診療報酬が算定されるかは、診療の内容、ご本人の状態、同じ建物で診療を受ける患者数、訪問した時間帯などによって変わります。往診の費用や対応時間も医療機関によって異なりますので、契約前にご確認ください。
5. 実際は「両方使う」のが一般的
訪問診療と往診はどちらかを選ぶものではなく、両方を組み合わせて使うのが一般的な形です。
普段は訪問診療、急に具合が悪くなったときは往診
在宅療養の基本の形は、定期的な訪問診療で体調を継続的に診てもらい、その合間に急な変化があったときには往診で対応してもらう、という組み合わせです。
つまり「訪問診療と往診、どちらを頼めばいいのか」という問いに対する実際的な答えは、まず訪問診療を始めることで、急な変化のときに相談できるかかりつけの体制がつくられていく、ということになります。往診への対応や対応できる時間帯は医療機関ごとに異なりますので、訪問診療の開始時にご確認ください。
だからこそ、かかりつけの在宅医を持つ意味がある
日ごろから診てもらっている医師であれば、これまでの経過や服用しているお薬を踏まえて対応できます。急変のときに一から説明し直す負担も小さくなります。
初めての医師に夜中に来てもらうのと、これまでの経過を知っている医師に来てもらうのとでは、ご本人にとってもご家族にとっても心強さが違います。定期的な訪問診療を続けることには、こうした意味もあります。
6. 夜間・休日の対応はどうなっている?
「在宅療養支援診療所」は、24時間の連絡・往診・訪問看護の体制や、緊急時の入院先の確保など、国が定める施設基準を満たしたうえで届け出ている診療所です。
24時間の連絡体制があることだけで届け出の有無が決まるわけではありません。実際にどのような対応がとれるかも医療機関ごとに異なりますので、届け出の有無とあわせて、契約前に体制をご確認ください。
在宅療養支援診療所という制度
在宅療養支援診療所は、在宅医療を支えるための一定の体制を備えた診療所として、国が定める基準にそって届け出を行っている医療機関です。すべての在宅療養支援診療所に共通して求められる体制には、次のようなものがあります。
| 求められる体制 | 内容 |
|---|---|
| 24時間連絡を受ける体制 | 患者・家族からの連絡をいつでも受けられること |
| 24時間の往診体制 | 必要時に往診できる体制を確保していること |
| 24時間の訪問看護体制 | 連携先を含め訪問看護を提供できること |
| 緊急時の入院体制 | 入院が必要になったときの受入先を確保していること |
| 連携先への情報提供 | 連携する医療機関などへ必要な情報を提供すること |
| 意思決定支援の指針 | 本人・家族の意向を支える指針を定めていること |
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 8. 質の高い在宅医療の推進」(参考)在宅療養支援診療所・病院の施設基準 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686053.pdf
※ 2026年度(令和8年度)の診療報酬改定では、災害などが起きても在宅医療を続けられるようにするための業務継続計画(BCP)の策定と、その定期的な見直しが新たに要件に加わりました。機能強化型かどうかにかかわらず、すべての在宅療養支援診療所・病院が対象です。
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 8. 質の高い在宅医療の推進」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686053.pdf
さらに、在宅医療を担当する常勤医師の人数、緊急の往診や看取りの実績など、国が定める施設基準を満たす診療所は、機能強化型として届け出ることができます。要件は単独型と連携型で分かれており、複数の項目を組み合わせて判定されます。詳しくは医療機関にお尋ねください。
契約前に確認しておきたいこと
在宅療養支援診療所には、24時間の連絡先、往診を担当する医師、訪問看護の担当者、緊急時の受入医療機関について、患者さん側へ文書で示すことが求められています。
つまり、これらはご家族から聞いてよいことであり、聞かれる側も答える前提で体制を整えている、ということです。次のような点は、契約前に確認しておくと安心です。
- 夜間や休日の連絡先はどこか
- 連絡したあと、どのくらいで折り返しがあるか
- 往診が必要と判断されたとき、誰が来るのか
- 入院が必要になったときの受入先はどこか
遠慮の必要はありません。これらを事前に共有しておくことが、いざというときのご家族の落ち着きにつながります。
7. 岡山市で在宅医療をご検討の方へ
はれのくに在宅クリニック杜の街は、岡山市北区で訪問診療に特化したクリニックです。2025年10月に開院し、外科的処置や経腸栄養の管理、人工呼吸器の管理など、医療的な支えを多く必要とする方にも対応しています。
訪問診療を始めるべきか迷っている段階のご相談でも構いません。ケアマネジャー様、病院の地域連携室からのお問い合わせもお受けしています。
よくあるご質問
Q. 訪問診療を受けていない人でも、往診だけお願いできますか?
A. 医療機関によって対応が異なります。初めての方への往診に対応している場合もありますが、これまでの経過がわからない状態での診療となるため、対応できる範囲は限られます。継続的な支えが必要な状況であれば、訪問診療の相談から始めるほうがスムーズです。
Q. 訪問診療を受けていても、これまでの病院には通えますか?
A. 通えます。専門的な治療のために特定の診療科へ通院を続けながら、日常的な体調管理を訪問診療で受ける形は一般的です。訪問診療の医師と病院の主治医とで情報を共有しながら進めます。
Q. 救急車を呼ぶべきか、往診をお願いすべきか迷ったときは?
A. 意識や呼吸の状態に明らかな異常がある場合や、大量に出血している場合など、緊急性が高いと考えられるときは、迷わず119番通報をしてください。判断に迷う段階であれば、訪問看護ステーションやクリニックの連絡先に電話して相談できます。岡山県内であれば「岡山県救急安心センター」(♯7119 または 086-222-7119、全日24時間)に相談できます。全国版救急受診アプリ「Q助」も判断の助けになります。
Q. 訪問診療は何歳から受けられますか?
A. 年齢の制限はありません。通院が困難な状態であれば、お子さんから高齢の方まで対象になります。対応できる年齢層は医療機関によって異なるため、事前にご確認ください。
8. まとめ
訪問診療は計画にそって定期的に行う医療、往診は必要になったときにその都度お願いする医療です。費用のかかり方も、依頼の仕方も異なります。
ただし実際には、この2つはどちらかを選ぶものではありません。定期的な訪問診療を土台にして、急な変化のときには相談できる先がある。この形が在宅療養の基本になります。
往診への対応や、夜間・休日の体制は医療機関によって違いがあり、確認してよいことでもあります。気になる点は契約前に聞いておいてください。一つずつ確かめていけば大丈夫です。
はれのくに在宅クリニック杜の街では、訪問診療に関するご相談を受け付けています。
ご相談・お問い合わせはこちら出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 8. 質の高い在宅医療の推進」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686053.pdf
- 総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html
- 総務省消防庁「全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate003.html
- 岡山県「岡山県救急安心センター(♯7119)」https://www.pref.okayama.jp/page/1032702.html
※ 本記事の内容は2026年8月現在の制度に基づいています。
