地域共生社会とは?地域包括ケアとの違いと岡山で始まっている実践
「地域共生社会」という言葉を、研修や会議で目にする機会が増えていないでしょうか。地域包括ケアと何が違うのか、理念はわかっても実際に地域で何が動いているのかが見えにくい——そう感じている方は少なくありません。この記事では、地域共生社会の意味と地域包括ケアシステムとの違いを整理したうえで、岡山で始まっている実践の一例をご紹介します。介護や医療の仕事に携わる方はもちろん、ご家族の介護に向き合っている方にも役立つ内容です。
「地域共生社会」——言葉だけが先行していませんか
まずは言葉の意味から確認します。ここを押さえると、後半の「地域包括ケアとの違い」がすっと理解できるようになります。
厚生労働省が掲げる定義
地域共生社会とは、制度や分野ごとの「縦割り」、そして「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会のことです。2016年に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」で掲げられ、以降、国の福祉政策の基本的な方向性となっています(出典:厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」)。
ポイントは2つあります。1つは「縦割りを超える」こと。高齢者は介護保険、障害のある方は障害福祉、子どもは児童福祉——と制度ごとに分かれてきた支援を、分野横断でつなぎ直そうという考え方です。もう1つは「支える側・支えられる側という固定的な関係を超える」こと。誰もが役割を持ち、支え合う地域を目指しています。
なぜいま国が推進しているのか
背景には、従来の制度では受け止めきれない課題が増えてきたことがあります。たとえば、80代の親が50代の子どもの生活を支える「8050問題」。子育てと親の介護が同時期に重なる「ダブルケア」。あるいは、介護する側もされる側も高齢者という老老介護。こうした課題は、1つの制度・1つの窓口だけでは対応が難しく、「制度の狭間」と呼ばれてきました。
2021年には改正社会福祉法が施行され、市町村が分野を超えて相談を丸ごと受け止める「重層的支援体制整備事業」も始まっています。国の制度としても、縦割りを超える仕組みづくりが進んでいる段階です(2026年9月現在)。
地域包括ケアシステムとの違い
「地域包括ケアとどう違うの?」というのは、よくいただく疑問です。結論から言うと、両者は対立する概念ではなく、地域包括ケアの理念を全世代・全分野に広げたものが地域共生社会だと理解するとわかりやすくなります。
対象の違い——高齢者中心から、全世代・全対象へ
地域包括ケアシステムは、高齢社会を背景に「高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるように」という目的で整備されてきた仕組みです。住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することを目指しています(出典:厚生労働省)。
一方、地域共生社会は対象を高齢者に限定しません。障害のある方、子ども・子育て世代、生活に困りごとを抱える方、難病の方——全世代・全対象に理念を広げたものです。
仕組みの違い——制度・分野を「超える」ことが前提
地域包括ケアが「高齢者向けのサービスを地域で一体的に提供する体制づくり」だとすれば、地域共生社会は「医療・福祉・教育・行政・企業・地域住民など、制度や分野そのものの垣根を超えたつながりづくり」まで視野に入れています。仕組みを整えるだけでなく、地域全体の関係性を編み直すイメージです。
なぜ医療や介護の現場だけでは解決できないのか
理念はわかっても、「現場の実感とどうつながるのか」が見えないと腹落ちしにくいものです。ここでは、在宅医療の現場から見える構造を整理します。
一人の患者さんの背景に絡み合う複合課題
在宅医療の現場では、病気そのものは氷山の一角にすぎない、と感じる場面が少なくありません。病状の悪化の背景に、介護するご家族の疲労、経済的な不安、住環境の課題、ご家族の孤立といった複数の事情が絡み合っていることがあるためです。医療の力で介入できるのは、そのうちの一部です。
「誰につなげばいいかわからない」が起きる構造
課題が複数の分野にまたがると、支援する側も「これはどこに相談すべき案件なのか」と迷いが生じます。医療は医療、介護は介護、と窓口が分かれているためです。だからこそ、分野を超えて顔の見える関係をつくっておくこと——つまり地域共生社会の考え方が、現場の実務にとっても意味を持ちます。
岡山で動き始めた実践——「岡山の在宅医療と在宅福祉を考える会」
では、岡山では何が始まっているのでしょうか。その一例が「岡山の在宅医療と在宅福祉を考える会」です。当院院長の入江真大が代表を務めており、医療と福祉の垣根を超えたつながりづくりに取り組んでいます。
発足の経緯と広がり
同会は2024年11月20日に発足イベントを開催し、医療・福祉関係者だけでなく、ご家族や地域の方々を含む600名にご参加いただきました(ハイブリッド開催)。在宅医療と在宅福祉——制度上は別々に語られがちな2つの領域を、同じテーブルで考える場としてスタートしています。
専門職と地域住民が「出会う場」としての勉強会
発足後も、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の在宅ケアをはじめ、さまざまなテーマで勉強会を重ねています。特徴は、専門職だけの閉じた勉強会にせず、ご本人・ご家族・地域の方々にも開かれた場であることです。知識を共有するだけでなく、現場の悩みや当事者の声を直接聴くことで、具体的な連携の糸口が生まれる場になっています。参加費無料・オンライン参加可能な回もあり、どなたでも参加しやすい形で運営されています。
家族・支援者が今日からできること
最後に、この記事を読んでくださったあなたが、明日から取り入れられることを2つだけお伝えします。
一人で(一つの職種で)抱え込まない
介護や療養の困りごとは、複数の分野にまたがっているのが普通です。「これは医療の話なのか、介護の話なのか」と自分で仕分けてから相談する必要はありません。まずは身近な専門職——ケアマネジャー、訪問看護師、かかりつけ医——に、そのまま話してみてください。つなぐのは専門職の仕事です。完璧に整理してから相談しようとしなくて大丈夫です。
岡山市での相談先
お住まいの地域の地域包括支援センターは、高齢者に関する総合相談窓口です。また、医療的な相談ごとは、かかりつけ医や在宅医療を行うクリニックでも受け付けています。はれのくに在宅クリニック杜の街でも、訪問診療に関するご相談を受け付けていますので、「誰に聞けばいいかわからない」段階のお話でも、お気軽にお寄せください。
※本記事の制度に関する記述は2026年9月時点の情報です。出典:厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月閣議決定)ほか。
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